セコさと意地だけで挑むマラソン大会や、しみじみとした日常を綴ります。



   
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まんた1968

Author:まんた1968
数年前からランニングを続けている奈良県在住のオッサンです。
年に二、三回ですが、ウルトラマラソンにも挑戦しています。
タイムは凡庸なものですが、完走を目標に意地で走りつづけることを得意としています(笑)。

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白昼の死角・後編(えびす・だいこく100kmマラソン番外編)

   
 玉作史跡公園から再び温泉街へ戻ってきた頃には、正午を回っていた。
 温泉街には「玉造温泉ゆ〜ゆ」(下の画像・ネットから借用)なる日帰り入浴施設があり、計画ではここで昼飯を食べ、風呂やマッサージやらで夕方まで時間を潰すつもりだったのだが……
 な、なんと定休日! 到着してみると駐車場には一台の車もなく、閑散としていたのだ(・_・;)
 や……やってもうた。ネットで予め、料金や館内設備などは確認していたのだが、一番大事なことのチェックをすっかり怠っていた。

 これにて計画は根底から白紙に。さあ、どうすべえ? 正午を過ぎたので風呂よりまず食事だが、ざっと歩き回ってみたところ、食堂らしきものが少なく、しかもランチタイムにもかかわらず営業していないときた。
 ど、どないしょ……焦りが募る。スマホを取り出し検索する。グルメスポットの検索なんて初めてした(笑) それによると史跡公園の南東側に、喫茶店のようなものが一軒あるみたいだが、定休日や営業時間の情報は無い。
 正直もう歩き回りたくはないけれど、飯にありつこうと思えば、行ってみるしか術はなし。が……

 ……道中どこでどう間違えたのか、喫茶店には辿り着かず、いつしか私は、ひどく淋しい場所にある、ラブホテル街に足を踏み入れていたのである。
 平日の白昼の、それも人影皆無なラブホ街ほど不気味なものはない。地元の人が車で利用するしかないような立地にあり、そんな所へ土地勘のない者が、徒歩で迷い込んでしまった。
 さあ、どうすべえ……5〜6軒の「いかにもな建物」を呆然と眺めながら考える。選択肢は以下の二つ。
 
 ①空腹で、しかも歩き疲れたので、ラブホにチェックインする。すれば風呂にも入れるし、昼寝もできる。飯はルームサービスで済ませば良し。
  だが、ラブホなんてここ十数年入ったことがないので、「お一人様でも可」なのかどうかよく分からん。その上、徒歩で入った経験もない。

 ②大きいスポーツバッグをぶら下げて、こんな時間にこんな場所をうろついていたのでは、不審者と間違われかねない。なので早々に退散するが吉。

 ……結局、②を選択。暑い最中をまたまた歩き回り、どうにかこうにかラブホ街からの脱出に成功。ようやく玉造温泉街へ戻ってきた。ああ、良かった。白昼夢から抜け出したかのような安堵感にどっと脱力。こうなりゃ、もう温泉街から動かんぞ。

 ということで、また食堂探しを再開。スマホとにらめっこして、温泉街の中で、訪ね忘れている食堂が無いかチェック。すると細い路地を少し入った所にある「出雲そばのお店」を見落としていたことに気付いた。足がだるいが、藁にもすがる思いでそこに向かう。
 と、路地の入口、つまり温泉街のメインストリートに面した場所に、奇妙な建物(下の画像・ネットから借用)があることに気付いた。
 三階建で素っ気ない外装。目立たない場所に「クラブ ローズローズ」と書かれたピンクの看板が掲げられている。クラブ? 飲み屋かしらん?……と一瞬思い、スマホで調べてみると、なんとそれは「ソ❤プランド(以下、泡国と書く)」であることが判明。しかも、「島根県で唯一の泡国」と説明されている。
 唯一……という部分が大いに引っかかった。どこそこで「唯一の〇〇」、「最後の〇〇」といった表現に、私はからっきし弱いのである。「ラスト・サムライ」みたいなシチュエーションが好きで、時代の流れに抗って踏みとどまっている姿に、感銘を受けてしまうのである。

 昨今の「社会のインチキ臭い健全化」の波を受け、ファミリー層の反発を買うからと理由で、各地の温泉場からこの手の建物が消えつつある。私が子供の頃は、地方の鄙びた温泉街にはストリップ劇場とかがあって当たり前だった。
「そこのお父さん、ええ娘いまっせ。どうですか?」みたいな客引きの声に、「いやいや、家族連れやから」とやんわり断っていた親父の顔が目に浮かぶ。
 子供だった私にはむろん、詳しいことなど理解できる筈もなかったが、ぼんやりと「大人の事情」であることだけは想像がついた。今思えば、ああいうのが「真の社会勉強」だったのだ。そういう過程を経て、子供は、オッサンへの階段を少しずつ上っていく、つまり、そんな時代だったのだ。

 ノスタルジーとお叱りを受けようが、こういう「生の教育環境」って、いつの時代にも必要だと私は思う。それを世間体を過度に憚って、強引に人目に触れないようにしてしまおうとするから、無理が生じ、むしろ社会が、そこに生きる人間が歪になっていくのだと思う。
 かく言う私も、独身の頃には泡国に何度かお世話になり、そっちの欲が薄れて利用しなくなった今でも、良い経験、良い思い出として残っている。だからこのお店にも、出来る限り長く、存続してほしいものである。

 ……とまあ、回り道してしまったが話を進める。
 路地を入ったところにある出雲そばの店は、休業していた。腹ペコのあまり、強烈な脱力感。これでほぼ、昼飯を食える可能性は潰えた。重い溜息と共に、また泡国の前まで戻ってきた。
 もう食事は諦めて、温泉街を後にするか……そう観念した矢先に、ふと、以下のアイデアが閃いた。

 日帰り温泉に浸かって飯を食う計画に狂いが生じたのは、予定していた施設が定休日だったことが原因なのだが、「風呂なら、ここにもあるじゃん」と私は、泡国の建物を見上げて思ったのだった。
 〇〇行為をする場所という思い込みが先行して、すっかり忘れていたけれど、泡国とは基本的に「入浴施設」なのである。
 そのことに気付いた途端、歩き疲れ、空腹感の限界に達していた私は、こう考えた。

 ①まず入店する。
 ②〇〇行為が目的ではないので、泡姫さんの選択は店におまかせする。
 ③入室し、泡姫さんに事情を説明する。泡姫さんはその道のプロなので、失礼のないように、やんわりと行為の方はお断りする。
 ④泡姫さんが理解してくれたら、さあ入浴。背中を流してもらい、「やったげるよ」と泡姫さんが言ったなら、マッサージを受ける。
 ⑤食事の出前がとれないものか、泡姫さんに訊く。出来るようならお願いする。

 以上の5点が可能ならば、ミッション・コンプリート。当初の計画が、予想だにしなかった形で実現することになる。問題はお値段だが……

 【ゆ〜ゆ】 入浴・¥410+マッサージ60分・¥4000=¥4410
 【泡国】 60分・¥23000

 スマホで調べた結果、初めに予定していた温泉施設との料金差が、以上であることが判明した。だみだこりゃ!と、私はいかりや長介さんの口ぶりを真似て呟いたのだった(笑)
 そらそうやなぁ……ハッハッハッハッ

 アホやなぁ、ワシは……夢から覚めた私は、温泉街を後にした。浮かび来るのは自嘲の笑みのみ。ま、そりゃそうだ(笑)
 駅の方角へ半分ほど引き返し、道端の観光案内所で、山陰道の宍道湖SAへの行き方を訊ねる。これが約2kmとまた遠い。しかも淋しい山道で、ずっと上り坂だという。「タクシーで行かれたほうが……」
 でもでもここまでくれば、もう疲れついで。腹も減りすぎて感覚もないことだし、半ばヤケで歩くことにした。

 そんなこんなでSAに辿り着いたのは、午後4時。売店へ直行、弁当とパンとお茶を買い、ベンチへ腰掛けてやっとのことで昼飯にありつく。
 食後、スマホの万歩計アプリで、本日の歩いた距離を確認する。なんと20km!

 あ……アホか、ワシゃ……高速バスの乗車時刻まであと数十分、SAの展望台から遠くに宍道湖を眺めつつ、そう独りごちる。
 昨日100km走って、今日ハーフマラソンほどの距離をさまようって、どないやねん!
 「白昼の死角」というタイトルの小説があったけど、本日の私がまさにそれ。こんなことってあるんやねえ。とにかく、一日中夢の中をうろついていたような気がする。
 ま、そんなお陰で、数十年ぶりに、ラブホや泡国に入る一歩手前まで接近したわけだけど(笑)

 宍道湖の北側が微かに見える。昨日、あそこをひいこら走っとったんやねえ……半ば夢心地で、私はそんなことを思ったのだった。
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白昼の死角・前編(えびす・だいこく100kmマラソン番外編)

   
 「えびす・だいこく100kmマラソン」翌日の5月29日(月)、泥のような眠りから目覚めたのは、午前8時。さあ、朝食。
 素泊まりプランでの宿泊だったが、予約なしでも食べられるというので、ホテルの食堂へ行く。マラソンの疲れは予想以上で、外へ食べに出るのが億劫になった。

 ホテルの和洋バイキングは殊の外美味しく、ウルトラマラソン明けの朝食は、内蔵疲労を考慮して腹八分目と決めている私も、ついついたくさん食べてしまった。今から思えば、このことが大いに幸いした。無意識の内に何かの予兆のようなものを感じ取っていたのかもしれない。

 9時半にチェックアウトし、JR松江駅へ。
 今回の大会出場は練習不足の状態で挑むため、何とか完走できたとしても、翌日のダメージは多大だと予め予測がついた。なので観光は綺麗サッパリ諦め、温泉に浸かってマッサージを受けようと計画していた。仕事のストレスも溜まっていることだし、何より歩き回りたくなかったのだ。

 さて松江で温泉と言えば、一畑電車の駅がある「松江しんじ湖温泉」というのがあるけれど、古代史好きの身としては、やはり「玉造温泉」の方に行ってみたい。最寄り駅も松江駅から二つ目と近いことだし、それに決定。計画段階からそのつもりで、帰りのバスのチケットも、玉造温泉に近い山陰道の「宍道湖SA」乗車で購入した。さあこれで夕方まで、温泉でゆったりまったり出来るわけだ。

 というわけでJR山陰線で「玉造温泉駅」へ移動。駅舎はこざっぱりと整備されているが、想像していた以上に田舎の駅だ。松江駅周辺が結構な賑わいだっただけに、その落差に驚く。
 温泉街は駅から玉湯川に沿って南へ歩くこと2km強。足が辛いし、手荷物も嵩張るが、タクシーは使わない。温泉に着きさえすれば羽を伸ばせるのだから、ここは節約。
 昨日に引き続き、今日も真夏日。朝から雲一つない青空。少し歩くだけで汗ばんでくる。
 澄んだ玉湯川の水音を聞きながら、のどかな田舎道をぶらぶらと歩く。しかし、ちょっと不気味なまでの人影の無さ……。

 温泉街まで行けば賑やかだろう、と思っていたのだが、いざ着いてみると……
 ホ……ホンマ人がおらん……(・_・;) 平日の月曜の午前中だからこんなものか……と自分に言い聞かすも、そのあまりの静けさ、人通りのなさが不気味にさえ思える。しかしここは、紛れも無く温泉街の中心部らしく、玉湯川の両側には、マラソン遠征ではおよそ縁のなさそうな、いかにも「高級老舗ホテル」といった風情の建物が間隔をおいて並んでおり、現代風に改装された土産物屋の姿もチラホラ。
 無いのは、人影ばかりなりで、まるでつげ義春「ねじ式」を彷彿とさせるシュールな世界に放り込まれたかのような錯覚を覚える。
 悪夢一歩手前……どことなく嫌な予感がする。

 気を取り直し、歩き始める。日帰り温泉施設に行く前に、汗かきついでに「出雲玉作史跡公園」を見学することにした。
 この辺り一帯は、橋の欄干に勾玉があしらってあることからも分かるように、古代には「玉生産」の盛んな先進地域だったと推測されており、古代史好きの身としては、この史跡公園訪問をけっこう楽しみにしていたのだ、が……
 ……これが全くの期待はずれ。
 玉湯川東側の丘陵部に拡がるだだっ広い公園内には、発掘研究成果に基づいて古代の竪穴式住居のようなものが復元されていたりするものの、園内の大部分は、じいちゃんばあちゃんのゲートボール場と化していた。おまけに当日は大会だったらしく、その賑やかなことといったら……古代出雲を偲ぶ雰囲気には程遠いのであった(泣)

 重たい足を引きずり、汗だくになって丘を登ってきたというのに……いやが上にも溜息が漏れる。
 こうなればとっとと温泉施設に行って、風呂に浸かって、マッサージを受けて、飯を食い、夕方まで冷房の効いた空間で過ごすが吉。という思いとは裏腹に、そうは問屋が卸さないのであった……。
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第24回 2017えびす・だいこく100kmマラソン⑤

   
 左手に大きな宍道湖を眺めながら、一畑電車北松江線の線路に沿うかたちで、西へ西へと走り続ける。
 一畑電車の津ノ森駅(75km地点)を通過。しばらく行くと一畑口駅がある。この駅は「目の神様」として有名な「一畑薬師」の最寄り駅となっており、通過の際、近年老眼が進んできている親父のことを思い出し、お参り出来ないので、せめて心の中で合掌する。柄にもない親孝行(笑)

 その後、80km地点の園駅の辺りで、永遠に続くかと思われた「宍道湖との並走」も、ようやく終了。つまり、湖の西の端まで到達したわけで、この先はゴールまで、一畑電車に沿って、田舎道を走ることとなる。
 日曜日なので沿道のお店は休業が目立つが、それでも応援メッセージだけはきちんと掲示していてくれたりする。
 残り20kmを切り、完走できる目処はどうにかついてきたものの、足はガチガチで、スタミナ切れの症状も出始めた。走り込みが出来ていないせいなのは明らかで、こうなればこの先、時折歩きもまじえて、騙し騙しゴールへ近づいていくしか術はない。
 もう「格好良さがどうとか」言っとれん。前半の山道で調子をこきすぎた。ウルトラはうまいこと出来ているもので、終盤ここへ来て、見事相殺というわけだ。とにかく、応援メッセージを励みにもう一頑張りしよう。

 宍道湖畔の風景からは遠ざかったけれど、ゴールまでただひたすら直進することに変わりなく、精神的苦痛は尚も続く。
 ああ、たまらんなぁ……と思い始めた矢先、85km地点の平田本町商店街の辺りで、ついに道路標識に「出雲大社」の四文字が出現!
 「やっと出た! やっと出た!」アベベさんと共に年甲斐もなくはしゃぐ(笑)
 いやぁ〜長かった。宍道湖畔に出てからというもの、単調な展開が続いていただけに、余計そう思えたのだ。
 とにかく、残り14kmの辛抱。

 が……そこから先がまた長かった(泣)
 出雲大社の道路標識が出始めたのだから、「もうすぐ大鳥居が見えてくるに違いない」と思い込み、スッポンのように首を伸ばして走り続ける始末。しかし、行けども行けども見えてこないものだから、めげそうになる。
 ちなみに私は、これまで出雲大社に行ったことはない。なのでそこに、遠方からでも確認できるほどの大鳥居があるか否か、知るわけもない。つまりテレビとかで観たイメージだけで、「あるはずやろ」と思い込み、期待しているのだからおめでたい。いや、始末に負えない。

 「鳥居、鳥居、鳥居はどこじゃ……」
 呪文のように念じながらのレース最終盤。走りはもう幽鬼さながらで、傍目から見れば、もう危ないオッサン丸出しである。
 その上、ここへ来て、ついにアベベさんにも付いていけんようになった。なんか去年の村岡と似たような展開……小さくなっていくアベベさんの後ろ姿を見送りながら、「お元気で……」と胸中で手を振る。もう追いかける気力は微塵も無し(泣)

 それから以後、ゴール付近へ至るまでの記憶がない。写真が残っていないところから察するに、たぶん決死の形相でただひたすら、前進していたということだろう。
 とにかく気付いた時には、周囲がやけに賑やかになっていた。出雲大社は島根県でも最大の観光スポットだし、日曜日の夕刻ということもあって、人通りが多いのも当然と言っちゃ当然。
 「よう頑張った!」「お疲れさん!」沿道からの数々の声に、愛想を振り撒く元気も最早無く、神門通り交通広場に設けられたゴールアーチに吸い込まれる。
 長かった一日が終了。無事完走できたことは嬉しいのだけど、ゴール直後は疲れのほうが勝ちすぎて、正直何も考えられなかった。

 すぐさま完走証を発行してもらう。13時間32分47秒。ゴール閉鎖までおよそ半時間の貯金を残してのFINISHだった(下の画像はゴール後に撮影)。
 完走の余韻に浸る元気もなく、近くの「日の出館」に直行し、預けておいた手荷物を受け取る。この旅館の風呂場が参加者に無料開放されているらしいのだが、今の時間は混雑していることだろうし、何よりバテバテで入浴する気力も湧かない。なのでボディシートでささっと体を拭き、着替えを済ませると、一畑電車の「出雲大社前駅」へ向かった。

 駅は松江市内へ帰るランナーで混雑していた。冷えたスポーツドリンクを飲みながら待つことおよそ20分、電車が来たので乗車。ゼッケン提示で運賃は無料になる。
 この一畑電車は、1時間一本の運行で、紙一重の差で乗り過ごせば、松江到着が大幅に遅くなる。午後7時を回って晩飯時だったが、疲れすぎて空腹感も無く、あるのは一刻も早くホテルへ帰り着き、風呂に入ってベッドに横たわりたいという欲求だけだった。

 電車が発車した。乗客は疲れ果てたランナーのみ。当然、車内はどことなく汗臭い(笑)
 出雲大社前駅からしばらくは「大社線」という路線なので、途中の川跡駅で「北松江線」に乗り換え。昼間この足で辿った道を逆方向から、今度は電車で辿り直すわけだけど、日が落ちてしまったので宍道湖の様子さえよく判別できなかった。

 終点の「松江しんじ湖温泉駅」に着いたのは、午後8時を回った頃。ケチって安ホテルに拘ったせいで、夜道を、JR松江駅方面まで2km強も歩かないといけない。足がツラいのでタクシーを拾えば万事解決なのだけど、それすると、ホテル代を節約した意味がなくなるのよね。だから初志貫徹、夜になって帰り道も分かりにくくなったけど、ブラブラ歩きゃその内着くわい(笑)

 途中コンビニに寄って、ホテルに帰り着いたのは9時ちょっと前。部屋に入るなりフロアにへたり込み、あぐらをかいたまま弁当をかき込む。その後風呂に入り、ベッドに横たわるやそのまま爆睡。意識が飛んだ。
 こうして2017えびす・だいこく100kmマラソンが無事終了した。
 後日発表の完走データによると、アベベさんも無事、私より15分ほど早くゴールインされたようで何よりだ。
 多忙で、一時は出場さえ危ぶまれた今大会。練習不足の身で、出られただけでも感激なのだが、その上、完走までさせてもらった。月並みな言い方だけど、スタッフの方々や、苦楽を共にしたランナーさんたちのお蔭があってこそで、自分の完走という結果など、正直おまけのようなものだと思っている。
 皆さん、本当にありがとうございました。ホンマええ大会だと思います。抽選に当たったなら、来年もぜひお世話になりたいですね(_ _)

 
 ⭐えびす・だいこく100kmマラソンの大会レポートはこれにて終了ですが、「番外編」として、次回は大会翌日のちょっとオモロイ顛末を記事にしたいと思っています。
 飢餓状態に陥ったオッサンが、重たい足を引きずりながら、食い物を求めて某温泉街をさまよい歩き、良からぬことを夢想したりします(笑)
 どうぞお楽しみに。
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第24回 2017えびす・だいこく100kmマラソン④

   
 御津エイドを過ぎると、また山越えに突入。常連さんが「チェリーロードの先にもう一山ある」と仰っていたが、これのことか?
 詳細は不明だけれど、とにかく「これがラスト」と信じて走りに拘る。思い返せば、ここで歩きを挟まなかったことが、後半のバテバテに直結したような気がする。

 くねくねと登坂。このエリアは少し内陸を通っているため、日本海が時折しか臨めない。スタートからここまで、ずっと海原を横目に走ってきただけに、けっこう精神に堪える。

 ……と、いつしか道の右側に背の高いフェンスが続くようになった。しかもフェンスの上部には、侵入者を阻むかのように、禍々しい有刺鉄線が張り巡らされている。
 「なんじゃいな、こりゃ?」……と不審に感じたのはたぶん私のような初出場者だけで、常連さんや地元の方には、単なる日常的な光景に過ぎないことだろう。
 が、それが眼下に現れた瞬間、予備知識の無かった私は、ぞぞっと鳥肌が立つ思いがした。
 そう……原子力発電所だったのである。
 風光明媚な日本海に向けてその口を開けている、どこかしら場違いな近代施設。ここまで時間の流れが穏やかな海浜の風景ばかり辿ってきていただけに、その違和感は尚更だった。不意打ちを食らった、とでも言おうか……。
 お天気が良くて空気も乾いているせいか、「建屋」なんかもはっきりと見下ろせる。先の震災による原発事故の報道で、原発にはそういう設備があることを初めて知ったのだけど、遠目からとはいえ、実際目のあたりにすることになろうとは、予想だにしなかった。それもウルトラマラソンのレース中に。
 しかし原子力発電所って、鉄条網や監視カメラによって、裏山側の防備は厳重に施されているみたいだけど、素人目にも、海側があまりにも無防備に映るのは気のせいか? 爆発物を積んだ高速艇などが突っ込んできたらどないするん?、と心配になる。ま、便利な反面、まかり間違うとヤバイ施設でもあることも確かなので、そこら辺のことは十分に考えられているのだろうけど。

 ちなみにこの島根原子力発電所の近くには、「島根原子力館」という施設もあり、原子力発電について学べるよう、一般人に開放されているようだ。

 さてさて、島根原発の西側からは、また海沿いを走ることになる。
 「片句」という場所で51km地点。やっとこさ半分を超えた。その次の「手結」から、今度は海岸にほぼ沿うかたちで南下。54km地点の「恵曇漁港」で、はるばる辿ってきた日本海沿岸ともついにお別れ。一抹の名残惜しさが込み上げるが、ここからは内陸エリア。ほぼ真東へ進む。

 56km地点の「鹿島」を通過してしばらく行くと、今度は進路を南にとる。やがて61km地点の「生馬」を通過。この辺りで、今回のウルトラ遠征のベースにしている松江市街地に、コース中最接近していることになる。見上げれば道路標識に「この先松江市街」の文字。暑さは増してきたし、へばってきたしで、「このままホテルに帰ろうかしらん」と思ったりする。悪魔の囁き……ウルトラマラソンの辛いところだ(笑)

 そんな誘惑を力ずくで捻じ伏せ、更に南下して64km地点の「下佐谷」に到達。進路を真西に変更し、宍道湖の北部広域農道を走る。
 ただひたすらの直進路。アスファルトの照り返しで暑い暑い(;´Д`)
 しばらくその姿を見失っていたけれど、ここへ来て、またアベベさんと並走する展開になった。
 暑さに耐えかね、「アイスが食いたい」で二人の意見が一致。自販機を探したけれど飲料のものしかなかったので、対向車線側のヤマザキYショップへわざわざ寄り道。ガリガリ君ソーダ味を買う。
「安くて旨くて最高ですよね」とアベベさん。
 その意見に全く同意。高くて凝ったアイスより、こういう場面では赤城乳業のガリガリ君が1番。齧る度に身体が内側から冷えていく。

 広域農道を西進すること約4km。68km地点の東長江で今度は南下。
 一畑電車の線路下を潜ると、その先には、ついに宍道湖の姿が。
 ここから先は、右手に宍道湖を眺めながら、一畑電車北松江線の線路に沿うかたちで、ひたすら西へ西へと走っていけばいいだけなのだが……
  ……け……景色が一向に変わらん(~_~;)
 右手の宍道湖はとにかくデカすぎて、行けども行けども湖面をギラギラと輝かせているばかりだし……
 片や左手の一畑電車も、その赤茶けた線路を、ただひたすら先へ先へと伸ばしているだけ……
 おまけに日陰は皆無。真夏のような太陽が、情け容赦無く体を焼く。
 風景の、そのあまりの単調さに、カメラを取り出す気力を喪失。こんなエリアが80km過ぎまで続くらしい。た……たまらん(泣)

 途中のエイドで常連さんが、こんなアドバイスを下さったのを思い出す。
「宍道湖まで出れば後はフラットなんやけど……まあ、とにかくその先が、精神的にキツイんや」
 ウルトラマラソン後半特有の「キツさ」のことを仰っていると思っていたのだけど、「コレのことやったんやね」と今、実感する。前半の日本海側が変化に富んでいただけに、尚の事この単調さは地獄である。

 その上、走り込み不足の身で、前半の山道を欲張ったツケが、ここへ来て如実に出始めた。
 あ……足が重い……。前半で拵えた時間の貯金がそこそこあるものの、この分だとこの先、あっという間に消費してしまいかねない。焦る気持ちと裏腹に、身体が付いてこん(笑) やってもうたわ……と汗だくで、またまた自嘲の笑みを浮かべる。

 そして悪いことに、一畑電車が今日一日、ゼッケンを提示するだけで乗れるときた。
 ゴール後、出雲大社前から松江に戻るランナーのために、そのようなサービスを用意して下さった実行委員会さんには感謝感激なのだけど、一畑電車の線路に沿って走り続けている状況下だと、「この薬が毒にもなる(笑)」。
 何せ「一日フリー乗車券を胸に貼り付けて走っているようなもの」なので、駅の前を通過する度にいっその事レースを投げ出して、冷房の効いた電車に乗ってしまいたくなるのである。

 怠惰に流れるのは人の常。かァ〜この誘惑ときたら、た……たまらん(泣)
 誘惑もたまらんけど、でも、鬼の形相で、その誘いを撥ね退けるのもまたウルトラマラソンの醍醐味で、これまた「たまらん」のよね。
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第24回 2017えびす・だいこく100kmマラソン③

   
 片江湾を後にして、鯉のぼりがはためく長閑な光景の中を走る。
 やがて菅浦湾(19km地点)に到達。
 雲一つない快晴で、夏本番と言っても過言ではないお天気だが、そのお陰で、コース途中のいたるところが撮影ポイント。
 とにかく綺麗な光景が続く。
 せっかく海の傍を走っているのだもの、やっぱこうでなくっちゃ。8月生まれの自称「夏男」としては嬉しい限り。
 鉛色の海と空に苦しめられ続けた二ヶ月前の伊豆大島……同じ海ウルトラでも天候次第でこうまで違うか。
 出雲国風土記の「国引き神話」では、この島根半島は、神様があちこちの土地を引っ張ってきたことによって出来上がったとされており、今走っているこの辺りは、「越の国(現在の能登半島)」の一部を綱引きしたものだとされている。
 この大会のゴールである出雲大社の辺りは、「韓の国(当時の新羅)」の一部を綱引きしたものだとか。
 荒唐無稽と言ってしまえばそれまでだけど、ダイナミックなお話だとつくづく思う。ストーリーを思い浮かべながら絶景の海原に目をはせると、彼方に北陸や、朝鮮半島の南端までもが見えてきそうな気さえするではないか。

 やっぱ出雲やなぁ……感慨に耽りながら走っていると、いつしか笠浦のエイド(26km地点)に到着していた。
 片江エイド以上にバラエティ豊かな給食で、前日にランナーが提出した「手土産のお菓子」の幾つかが並べられており、誰からの土産か分かるように、紙にゼッケンNo.と名前、そして「◯◯さんから頂きました」と明記されている。
 運営側と参加者側の持ちつ持たれつ。これって一つの理想型ではなかろうか。
 湾が多く、漁港が点在しているので、振る舞われるワカメと豆腐の味噌汁も最高。走り始めてからずっと漂い続けている「磯の香り」。こういう中で食す海の幸って、やっぱデパ地下の物産展なんかとは訳が違う。

 笠浦からしばらく走ると、次は野波(30km地点)。海浜公園前で給水を摂る。
 付近には海水浴場もあり、晴天のもと開放感に満ち溢れている。

 さあこの後、コースの山場を迎える。「チェリーロード」という可愛らしい名称で呼ばれてはいるが、その実は、詰坂山超えであり、くねくね蛇行する舗装路を登坂する。しかしこれがまた、微妙なんだわ。
 楽ではないが歩きを挟むほどでもなく、無理すれば走破してしまえるあたりが怖いんだわ。
 「ウルトラは50kmからが本番」と言われるが、本番の手前でどれだけ本気を出せばいいのか、初めてのコースなのでよく分からんのよね。

 事前にネットでざっと調べたところでは、このチェリーロード区間を過ぎれば、もうこれといったピークは無いとのことだが、エイドで常連さんに訊いてみたところ、「いや、もう一山あるで」ということである。
 この場合、私は確実に生の声に信を置くことにしている。
 が、しかし、である……
 44km地点の御津漁港にあるエイドに到着した段階で、予想以上の疲労感が襲ってきたのだった。
 スタートからここまで、坂道でも全く歩きを入れずに進んできた。走り込み不足の身にとって、これって、ちょっと「カッコつけすぎ」なんでないかい? 後先考えず突っ込んでしまったんでないかい?

 「あちゃ〜やってもうた」……自嘲の笑みを浮かべながらの給水・給食。
 まだ半分も来ていない。この先どれほどの山場が待ち構えているのか見当もつかないが、ひょっとして伊豆大島に続いてリタイア? こ、こんな良い天気なのに?

 ま、計画性の無さは今に始まったことではないから、こういう展開は望むところだけど(笑)
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