セコさと意地だけで挑むマラソン大会や、しみじみとした日常を綴ります。



   
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まんた1968

Author:まんた1968
数年前からランニングを続けている奈良県在住のオッサンです。
年に二、三回ですが、ウルトラマラソンにも挑戦しています。
タイムは凡庸なものですが、完走を目標に意地で走りつづけることを得意としています(笑)。

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夏の流れ

   
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 丸山健二という小説家をご存じでしょうか? 若くして処女作にて芥川賞を受賞後、商業ベースとは対極の姿勢で執筆活動を続けてきたので、たぶんそれほど知名度は高くないと思います。

 現在の丸山氏の作品は「観念的」といいますか、どうもゴテゴテしていて好きではないのですが、文体を変える以前の氏の作品は、本当に良いものが多かった。
 「月に泣く」「踊る銀河の夜」「火山の歌」、沢田研二主演・森田芳光監督で映画化もされた「ときめきに死す」などなど、思い出深いタイトルで一杯です。

 中でも蒸し暑い今の季節に読み返したくなるのは、処女作「夏の流れ」です。原稿用紙にして百枚程度の短編小説とは言え、そこいらのぶ厚い上下本を軽々と凌駕するほどの深い読後感が残ること請け合いです。

 題名の通り、季節は夏。物語の舞台は、とある海辺に建つ刑務所。
 丸山氏は感傷を排した(つまり心理描写を使わない)ハードボイルドな文体で、刑務所に勤務する看守たちの淡々とした一夏の日々を的確に描いていきます。
 臨時収入を得るために死刑囚の刑の執行を請け負うベテラン看守たち。仕事とはいえ、刑の執行直後に、当たり前のように帰宅して、妻や子に接し、飯を食う……そんな先輩たちの無神経さや仕事の異常さについていくことが出来ずに、職場を去る新米の看守。
 「俺たちを見たあいつの目…あれは街中で蛇に出くわしたって目だよ」「なんだか腹が立つな」
 先輩たちはそんな冷え冷えとした冗談を言い合いながら、去りゆく後輩の背中を見送ります。
 しかしまた明日になれば、彼らは相も変わらず囚人たちを見張り、時には生活のために絞首刑に立ち会い、死刑囚の足元の板を開くボタンを押さなければなりません。感情を押し殺し、一個の機械のように振る舞わざるを得ない彼らの日々は、まるで「夏の流れ」のようにして過ぎていきます。

 そしてラストで、妻からおなかの中の赤子が動いたと告げられた看守は、休日のどこまでも明るい砂浜で、「この子が大きくなって俺の仕事を知ったら、一体どう思うのだろう…」と初めて一抹の不安を感じるのです。この一瞬の、人間的な感情の発露をもって物語は終わります。夏の太陽に照らされた主人公の影が、よりいっそう濃くなる映像を見せつけられるかのような見事なラストシーンです。文章で映像を凌駕するとは、まさにこういうことかと納得させられます。

 蒸し暑い日々の中で、なぜこの「夏の流れ」を読み返したくなるのか? それは作品の中に形作られた夏が「熱を帯びていない」からなのです。蝉が鳴こうが麦茶を飲もうが、どこか最初から冷えているのです。
 丸山氏の簡潔な文体が構築した作中の「冷夏」を味わいたくて、この夏もついつい本に手が伸びそうな次第です。
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