セコさと意地だけで挑むマラソン大会や、しみじみとした日常を綴ります。



   
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まんた1968

Author:まんた1968
数年前からランニングを続けている奈良県在住のオッサンです。
年に二、三回ですが、ウルトラマラソンにも挑戦しています。
タイムは凡庸なものですが、完走を目標に意地で走りつづけることを得意としています(笑)。

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懐かしさを伴う死のイメージ

   
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 残さなくてもいいような負け惜しみめいた詩を残してはみたものの
 それで気持ちがサッパリするわけでもなかった。
 ただ、あるのは犬や猫と同じように
 なんとなく死にたくないという気持ちだけだった。
       
 (水木しげる著『劇画近藤勇 星をつかみそこねる男』より抜粋)

 漫画家の水木しげるさんがお亡くなりになった。
 水木漫画といえばゲゲゲの鬼太郎に代表される「妖怪モノ」が殊更有名だが、妖怪が登場しない作品も数々あり、中でも史実をベースにした「劇画モノ」の二作品が、大変印象深い。
 一つは『劇画ヒットラー』であり、もう一つは『劇画近藤勇 星をつかみそこねる男』(いずれも「ちくま文庫」)である。
 両作品とも水木さんの一番脂ののりきっていた時期に生み出されたもので、後者などは大ボリューム作品にも拘わらず、画力に一点の弛みもなく、水木漫画の特徴でもある重厚な背景画(西洋銅版画を想わせる、あの描き込みの凄さときたら……)を、ラスト一ページに到るまで堪能することが出来る。
 私は新選組が好きなこともあって、『劇画近藤勇』をこれまで幾度となく読み返した。それこそ手垢にまみれるほどに。

 上記の抜粋したナレーションは、新選組局長の近藤勇が、官軍に捕らわれ、板橋の刑場にて斬首されるシーンのものである。つまり、近藤の「この世を去るにあたっての思い」を表したものだ。

 斬首の間際の近藤の心境など、もちろん誰にも解らないし、何かに書き残されているわけでもないのだから、そこは想像するしかない。
 これまで小説家や脚本家、そして水木さん以外の漫画家も、新選組を描くについて、「近藤勇の断末魔の心境」をそれぞれにイメージし、出来るだけ生々しく描き出そうと努力をしてきた。

 そして大抵の場合が、近藤の無念を強調するか、あるいはその瞬間まで新選組局長としての矜持を貫き、さばさばして刑場の露と消えた……のいずれかのイメージに着地することが多かったのだが、水木しげるは、そのどちらとも違った。

 上記の抜粋から解るように、水木しげるのイメージした剣豪・近藤勇は、己の死を前にして「困惑」しているのである。
 犬や猫と同じように、ただ何となく「いやだなあ……死にたくないなあ」と思ってはいるものの、それさえも切実ではないのだ。生にしがみつきたいのか、このままあの世へ行きたいのか、自分でもよくわからないでいるのだ。

 こんな近藤勇に出会ったのは、水木漫画が初めてだった。これまで映画などで描かれてきた近藤が、この漫画を読んでから、やけに嘘臭く、薄っぺらに感じられてならなかった。歴史上の大人物でさえ、自分の死に際しては、「なんやようわからん」という心境が本当のところではないのか、と強く思うようになった。

 水木しげるさんは、重厚な背景にちょこんと溶け込んだ妖怪や人間を描くことが多い。そこには自然も、建物も、動物も、人間も、一切に上下はない。境界線がきわめて希薄なのだ。
 だから近藤勇も斬首され、自然の一部へと溶け込んでいく。なので人間特有の悲壮感などから放れていられるのだ。このような視点が、水木漫画に一貫していたように思う。御自身の戦争体験を材にした戦記漫画「総員玉砕せよ」にさえ、そのような通底音が流れているように感じる。

 ほんのちょっとした偶然で、九死に一生を得られた水木さんだからこそ到達された境地が、漫画に反映されていたということだろうか。なので水木さんが描く「死」は、どこかしらほっこりと懐かしいのである。

 そして御本人も、ついにその懐かしい世界へと旅立たれた。ご冥福をお祈りします。合掌。
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