セコさと意地だけで挑むマラソン大会や、しみじみとした日常を綴ります。



   
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まんた1968

Author:まんた1968
数年前からランニングを続けている奈良県在住のオッサンです。
年に二、三回ですが、ウルトラマラソンにも挑戦しています。
タイムは凡庸なものですが、完走を目標に意地で走りつづけることを得意としています(笑)。

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新・雨月 戊辰戦役朧夜話

   
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 昨年お亡くなりになった船戸与一氏の遺作『満州国演義』の文庫版刊行(新潮文庫)が、昨夏より始まり、全九巻中、現在第七巻「雷の波濤」まで発売されている。
 満州建国前夜から開幕した長大な物語も、七巻目でいよいよ太平洋戦争へ突入。展開がうねり始めた感があり、残りの第八巻「南瞑の雫」、最終巻「残夢の骸」と費やして、歴史的には着地する場所が「敗戦」と解っているものの、作者の創作した「敷島四兄弟」が、どのような結末を、いつ、どのような場所でそれぞれ迎えるのか、興味津々で読み進めている。主要登場人物が悉く死んでしまうことで有名な船戸小説でもあるので、今回もまたそうなってしまうのであろうか? とにかく大河ドラマは敗戦へと向けて加速し始めている。

 ところでこの『満州国演義』の第一巻「風の払暁」のオープニングで描かれるのは、「慶応四年八月」と題された戊辰戦争の一場面である。西軍兵士たちが雪崩れ込み、会津が落城するシーンから始まるのである。

 満州国を描くのに、なぜ戊辰戦争が?……と一読奇異な感じを受けるかもしれないが、実は作者は、この満州国演義の前に、徳間書店から『新・雨月 戊辰戦役朧夜話(ぼんしせんえきおぼろやわ)』という戊辰戦争を材にした上下巻の小説を発表しているのだ。
 私はこの『新・雨月』を読破していたので、比較的すんなりと満州国演義に入り込むことが出来たが、それでも開幕に「会津落城」を持ってきたことに、少なからず驚きを禁じ得なかった。つまり船戸氏は、戊辰戦争(明治維新)から満州国(太平洋戦争)までを、一連の流れと考えていたわけである。
 学校の日本史の授業ではまずもって教えてくれない、そういった「歴史観(船戸史観とでも言おうか)」を提示されることで、日本近代史のこれまでとは全く異なる一面を見たとでも言うか、とにかく太平洋戦争関連はどちらかと言えば疎かった身には、目から鱗的な驚きがあった。

 『新・雨月』の徳間文庫版の解説(ジャーナリストの前田哲男氏による)が、大変分かり易いので、以下に簡単にまとめてみる。

 日本が東西に分かれて戦った戊辰戦争(日本史上最大の内戦)では、薩長を主体とする西軍(新政府軍)が勝利し、奥羽越列藩同盟や旧幕府軍で構成された東軍(西軍によって「賊軍」とされてしまった)は敗れ去った。
 以後、明治政府は、勝者である西軍の総督や参謀たちで占められることとなる。

 黒田了介(のち清隆 薩摩出身・第二代首相)
 山県狂介(のち有朋 長州藩・第三代首相)
 大隈八太郎(のち重信 佐賀藩・第八代首相)
 桂太郎(長州・第十一代首相)
 西園寺公望(公家・第十二代首相)
 そして板垣退助(大隈と連立内閣)のもとで日清・日露戦争の戦場指揮官を務める大山弥助(巌)、野津七次(道貫)はじめ明治軍隊の柱石となった人物の初陣もまた、戊辰戦争であり、これらの顔ぶれを見るだけでこの戦争が(湾岸戦争やイラク戦争と同様)西軍にとって「必要な戦争」であったのは明白である。

 対して敗者となった東軍はどうだろうか?
 奥羽越列藩同盟の藩からは、一世代後に、東条英機(盛岡藩)、板垣征四郎(同)、石原莞爾(庄内藩)、米内光政(盛岡藩)、山本五十六(長岡藩)といった軍人たちが輩出し、「昭和の戦争」を領導することになる。石原、板垣が「満州事変」の発頭人(作戦主任参謀と関東軍高級参謀)となり、東条が日米戦争に踏み切った軍人宰相であったことを知れば、戊辰の役とは『裏返された叛史』だったこと見方もできる。

 このように、様々な意味で戊辰戦争は昭和の軍閥興亡史にも揺曳しているのである。

 『裏返された叛史』……前田氏の解説に現れるこの言葉が心に引っ掛かった。
 満州国を現実のものとし、日本を拡張することを夢見た上記軍人たちは、皆、祖父や父親の代に戦に敗れ、惨めな思いを味わっているのである。
 世代的には、本人はそれを体験していないとしても、親族などから何かにつけ「敗者の味」を、成長の過程で聞かされることがあったであろう。
 敗北により「国を追われた者の子孫たち」が、海の向こうで新たなる国家を建設することに邁進した……戊辰戦争から太平洋戦争を一連の流れとして捉えると、そのような側面が露わになってくるのである。

 『満州国演義』で船戸小説にハマった方は、ぜひ『新・雨月 戊辰戦役朧夜話』も手にとって頂きたい。二つの作品は姉妹品、いや、合わせ鏡のような関係である。
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