セコさと意地だけで挑むマラソン大会や、しみじみとした日常を綴ります。



   
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まんた1968

Author:まんた1968
数年前からランニングを続けている奈良県在住のオッサンです。
年に二、三回ですが、ウルトラマラソンにも挑戦しています。
タイムは凡庸なものですが、完走を目標に意地で走りつづけることを得意としています(笑)。

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第19回村岡ダブルフルウルトラランニング④

   
 右折した途端、突如として立ちはだかる「目も眩まんばかりの急坂」。四度目の出場となる今回も、その瞬間の絶望感ときたら相変わらずだ。一瞬、意識が真っ黒(「白」でないところが味噌)になり、呼吸さえ忘れる。
 しかし、いつまでも怯んでばかりいられない。気が遠のきそうになろうとも、一歩一歩前進するほか、蘇武岳山頂に辿り着く術はない。
 44km地点の現在地の標高は、およそ260m。ここより約10km先に位置する蘇武岳頂上が、標高1040m。「日本屈指の山岳ウルトラマラソン」と銘打たれた村岡ダブルフルの、本番がいよいよスタート。これまで辿ってきたフルマラソン強の道のりなど、所詮は前菜程度の意味しかなかったことが、この時点で明らかになるのである。

 ここまで曲がりなりにも走ってきたランナーたちの足が、強烈な斜度によって歩みへと変わらずにはいられない。推進力が無くなり、時間だけが刻々と経過するので、ジレンマだけが増していく。凪いだ海原に浮かぶ帆船のような心境だ。
20161001135019417.jpg

 登坂して間もなく「耀山エイド(44.5km)」に到着。スタッフさんが冷えたおしぼりを用意して出迎えてくれる。食べ物も飲み物も多目に摂取し、被り水をしていざ再スタート。お遍路姿のアベベさんとほぼ同時に、エイドを後にする。
20161001135110e9a.jpg

 急坂はどこまでも続く。やがて前方にお猿さん姿の師匠を発見! 猿尾滝の折り返しで先行する師匠とすれ違って以後、もっと早くに追いつくつもりでいたのだけれど、結構手間取ってしまった。昨年の最終関門アウトを挽回しようと張り切っておられるのだろう。
 「今年はいけそうですね」伴走しつつ話し掛ける。
 「いや、そうでもなさそうや。脹ら脛が痛あてなあ……」と師匠。
 顔こそ笑っておられるものの、一歩一歩がかなりしんどそう。
 「まあ、行けるところまで行ってリタイアするわ」

 後ろ髪を引かれる思いで師匠とお別れする。あの調子だと、これから幾度も襲ってくる強烈なアップダウンをとても乗り切れそうにない。背後に小さくなっていく師匠の姿を、ちらっと振り返り、「御無念、おはらしします」と必殺仕事人のように胸中で呟く。愛弟子を自負する私の責務である。「ありがた迷惑じゃい!」と師匠に怒られそうだけど、こうでもしてテンションを上げていかないことには、延々と続く激坂に根負けしそうになるのよね(笑)

 息を詰め、歩き・時々走りでじりじりと登坂を続ける。歩きと走りの比率が逆になればなあ……と毎度思うが、今のところ五分五分にすることさえ難しい。
 アベベさんと抜きつ抜かれつの状態を保ち、「耀山牧場(47.4km)」「蘇武三叉路(48.8km)」の両エイドを通過。
 村岡初参戦のアベベさんも私と同じ歩きと走りの比重なのだが、とにかく歩きが速い。長身で歩幅が大きいこともあるのだけど、歩きの速度には割と自信のある私でさえ、少し気を抜くとあっという間に引き離されてしまう。なのでエイドはアベベさんより先に出ることを心掛けた。そしてしばらくして追い付かれ、逆転される、その繰り返しとなった。
 それにしても恐るべしアベベさんの健脚ぶり……お遍路さんのコスチュームで出場されているのだが、実際に四国霊場を自分の足で巡っておられるのではあるまいかと、想像したくなるほどの速さである。
20161001135657e46.jpg

 蘇武三叉路を過ぎて少しした頃、前方に桃色うさぎさんを発見! 88kmの部なので、我々が猿尾滝に寄り道している間に、ここまで来られていたというわけだ。この蒸し暑さの中、重たい着ぐるみでさぞかし苦戦中であろう。
 とその時、妙なことに気が付いた。前方を登坂しているはずの桃色うさぎさんが、歩きでこちらに下ってきているのである。??……ここは折り返しではなかったはずだが。
 両者の距離が縮まり、桃色うさぎさんの胸からゼッケンが取り外されていることが発覚し、びっくりする( ・_・;)
 私に気付いた桃色うさぎさんが言った。
 「ごめんなさい。リタイアしました」
 突然の展開に呆気にとられた私は、「はあ……」と応じた。驚いたのは、その後発せられた桃色うさぎさんの言葉である。
 「なので、歩いて会場まで帰ります」
 どこかすっきりした表情を浮かべ、カップラーメンでも食うような気軽さで、そうおっしゃったのだ。
 「頑張って完走してください」
 呆気にとられた私にそう言って、桃色うさぎさんは、てくてくと坂道を下って行ったのだった。

 「歩いて帰るって、ここから会場までどれくらいあるんじゃ?」
 驚きのあまりその時私がしたことは、頭の中にコースの平面図を思い浮かべることくらいだった。このままコースを逆に辿って蘇武岳の麓まで下りた後は、コースを外れ、田んぼ道なんかを歩いたりして、最短距離で村岡小学校に戻られるのだろうか?

 レース後、冷静になってこの時の桃色うさぎさんの行動を考えてみると、「らしいなぁ」という思いで一杯になる。リタイアを申告してから心機一転、収容車を待つのではなく、「時間も余ったことだし、村岡を散歩して帰ろう」と発想し、実行する……このあたりが素晴らしく、「何事も楽しみに転換できる」桃色うさぎさんらしいとしみじみ思うのだ。こういう人は強いですよ。レースから離れ、一人になっても、孤独を楽しむ術をしっかりと確立していらっしゃるので。
 コースから外れた後、「ランナーの知らない村岡の光景」を眺めながら、時折トンボにちょっかいを出したりなんかしつつヒョコヒョコと歩いている、桃色うさぎの着ぐるみを思い浮かべると、そのスケール感に胸がすく思いがする。
 に較べりゃ、私なんかまだまだ「ちいせぇちいせぇ」(笑) 

 桃色うさぎさんと別れてから、アベベさんと私は50km地点に到達。スタートから6時間21分が経過。昨年は5時間56分なので、この暑さから考えるとまあ許容範囲内。
 そして遂に「蘇武展望台(51.5km)」に到着。ここが第2関門。現時点での貯金は約1時間。後半の厳しさを覚悟せねばなるまい(泣)
20161001135757dd0.jpg

 遙々やって来た山の上から下界を眺め、しばし休憩。去年まで展望台には木製のデッキあったはずだが、撤去されたようだ。
 先程まで日が射していたが、ここに来て雲行きがあやしくなってきた。これだけの標高にいる割にはけっこうな不快指数。ここから先、ひと雨ほしいところだ。
201610011358291ab.jpg

 アベベさんより一足先に展望台を出発。蘇武岳の最高到達地点を過ぎると、66km地点くらいまではずっと下り坂。斜度は比較的緩やかなので、足腰に過度の負担をかけずに時間を稼ぐには絶好のエリアだ。
 「蘇武神鍋口(56.1km)」「蘇武白管山(59.4km)」とエイドに立ち寄りながら、淡々と距離を消化。第3関門である「蘇武小城(64.9km)」も無事クリア。20161001135925311.jpg

 そして66km地点からは44kmの部のランナーたちも合流し、4部門入り混じって、およそ2.2km先の和佐父峠(68.2km)を目指す。
 また登坂の始まり。距離こそ短いが、強烈な斜度。時間の貯金が目減りしていく(泣)

 またアベベさんと抜きつ抜かれつの展開になる。急坂を歩きながら、アベベさんの背中の文字を眺める。
 そこには縦に『南無大師遍照金剛(なむだいしへんじょうこんごう)』と墨書されている。我が家は浄土真宗なので詳しくはないのだけど、これは真言宗のお経の一部だと以前聞いたことがある。
 そしてその横には同じく縦書きで、少し小さく、『同行二人』の文字。これの意味は、「一人で遍路していても、あなたはずっとお大師さま(弘法大師)と共に歩んでいるのですよ」ということらしい。弘法大師と一緒だから「二人」なのだ。
20161001140007787.jpg

 今回の村岡ダブルフルでは、なぜかこの『同行二人』が胸にしみた。レース中の私に同行してくれる「お大師さま」は、このアベベさんもそうだし、師匠もそう、海水さんもそう。そして既にリタイアされた桃色うさぎさんも、私の心の中では、共にゴール目指して前進を続けているのだ。
 その上、ウエストポーチには村岡小学生からの応援メッセージ。その子とも、私は「同行二人」なのだから、何を怖れることがあろう……そう強く思ったのだった。
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No title
文章の一文一文から村岡の風景が思い出されます。
やっぱり村岡はいいなぁ。

ピンクうさぎさんは前回、木曽100km繋がりで
スタート前にお話しました。
> 「なので、歩いて会場まで帰ります」
その発想はなかったわ(笑)
確かに、あそこからなら歩いても1時間くらいかな?ついでに村岡ファームとか寄れば美味しいもんも食べられるし。(現金持っていればの話ですが)

それにしてもアベベさん、気になります
お遍路姿どこかでお見かけしたかも?


>>pink_manさん
アベベさんは関東在住ですが、「四万十川」や「安芸大田しわい」など西日本の大会が好きみたいですね。
マイペースで朴訥とした、ちょっと不思議な雰囲気の方です。鼾も豪快でした(笑)

二泊コースだとおもっていたら、その日の内に新大阪までバスで戻り、夜行バスで帰っていかれました。タフですよね。


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