セコさと意地だけで挑むマラソン大会や、しみじみとした日常を綴ります。



   
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まんた1968

Author:まんた1968
数年前からランニングを続けている奈良県在住のオッサンです。
年に二、三回ですが、ウルトラマラソンにも挑戦しています。
タイムは凡庸なものですが、完走を目標に意地で走りつづけることを得意としています(笑)。

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女流作家二選

   
 今年も残すところ一週間。「本が売れない時代」と言われて久しいが、個人的には相変わらず、さほど昔と変わらないペースで読書している。

 今年初めて、知り合いから借りた楽天の電子書籍リーダーでの読書を試してはみたけれど、やはりどことなくしっくりこない。気のせいかもしれないが、目が疲れるように感じるし、それ以前に「あんなまな板のような物」の中で、画面をスクロールさせながら物語を辿っていると、なんだかその本の持つ本来の味わいが半減してしまうように思えてならない。
 だから使ったのは一回こっきりで、すぐにこれまでどおり、紙の本での読書に戻した。時代遅れと言われようが、電子に較べて多少高かろうが、これと思った本を、自分の嗜好に合った形で読むのがベストであり、そういうものに古いも新しいも無いと思うのだが。

 そして購入方法だが、その他の物は通販に頼っても、本だけは書店で買うように心掛けている。今年に入ってだけでも昔から知っていた本屋が二軒も閉店してしまい、「書店淘汰」の現実がひしひしと身近に感じられるようになってきた。
 これ以上リアル書店が消えていくのは見るに忍びない、との思いから、気になる本は書店に足を運んで手に取ってみるというスタンスを、これからも貫こうと考えている。
 アマゾンなどで他人のレビューを参考にして物品を購入する便利さは否定しないし、自分も活用しているのだが、本に関しては感じ方など十人十色で当たり前、それこそが嗜好品である証なのだから、書店に行って、実際自分の目で品定めするべきなのだ。

 そんな風にして選び、読破した本の中から、今年印象に残った作品を二点紹介。どちらも文庫で、作者はいずれも女性である。
 ☆まずは木内昇(きうちのぼり)さんの『櫛挽道守(くしひきちもり)』、集英社文庫。
 文庫の帯にも明記されているように、三年ほど前、中央公論文芸賞・柴田錬三郎賞・親鸞賞のトリプル受賞を果たした単行本の文庫化である。

 木内さんの小説は「笑い三年、泣き三月」と「よこまち余話」、そして最新作の「光炎の人」以外は全て読んでおり、一番のお気に入りは「ある男」(朝日文庫)だったりするのだけど、ここ数年読んだ現存の小説家の中では、抑制を利かせた語り口、確かな知識、筆力などなど、ピカイチの実力者だと感じている。おまけにその能力を、まだ3分の1程度しか発揮していないのではないかとさえ思わせる、将来的にも楽しみな作家である。

 なので三賞受賞のこの作品の文庫化を心待ちにしてきた。
 江戸時代末期の木曽が舞台で、腕の良い「お六櫛職人」である父親を尊敬し、そんな父の腕や心構えに少しでも近づこうと、ただひたすらに修練する長女の物語だ。「女だてらに職人を目指す」ことで生じる様々な軋轢を、そして女として生まれた者の宿命を、「お六櫛」に対する純粋一途な思いだけでくぐり抜けていく主人公の姿を、決して劇的でなく、慎ましやかに描き切った作者の力量は凄いと思う。

 ただ、ラストが少し綺麗にまとまりすぎているように感じられてならない。いや、綺麗にまとめたからこそのトリプル受賞だったのかも。
 とはいえ作者がこれまでの作品でさり気なく散りばめてきた「突き放したような皮肉感」がほとんど見られなかったので、期待が大きかった分、少し物足りなかった。なんだか「浅田次郎」を読んだ時に近い読後感だ。私が木内作品に求めるものとはちょっと違う。
 「光炎の人」では、その「木内テイスト」が戻っているようなので、数年後の文庫化を楽しみにしている。

 ☆そして二冊目は、坂東眞砂子さんの『瓜子姫の艶文(うりこひめのつやぶみ)』、中公文庫。
 2014年に若くしてお亡くなりになった坂東さんの、最後の長編小説の文庫化である。

 私の中では永らく「女流作家ベスト・ワン」で在り続けた坂東さんの長編を、まっさらの段階から読めるのも、本当にこれが最後だ。もう名残惜しやの一言。

 こちら作品も江戸末期の物語で、舞台は伊勢国・松坂。木綿問屋の女将と、その夫に恋文を送った遊女の、それぞれの心情が、対比して描かれる。一言で言うなら「独占欲」だ。「夫がそんな遊女ごときに本気になるはずがない」「何が何でもあの女を亡き者にし、女将の座を我がものとしたい」……対象的な境遇にあるそんな二人の女の、生々しい心の中が、「櫛挽道守」とは反対に、色鮮やかに毒々しく描かれる。
 宮尾登美子顔負けの、「生と性」にこだわり続けた坂東眞砂子が、ここでもエンジン全開である。
 そして二人の思いが交錯してから先、話は思わぬ方向に急展開する。何故作者がこの時代の伊勢を舞台に設定し、何を描こうとしていたのかが、ここに来て明らかになるのである。
 やはり坂東眞砂子……読み終えた瞬間、ため息が出た。

 晩年小説以外のゴタゴタ(興味がある方はネットで調べてみてください)で騒がれ、叩かれた作者であるが、ご自分で蒔かれた種とはいえ、そのことが作品の売れ方や評価にまで影響したかと考えると、愛読者の一人として残念でならない。
 私は基本的に、小説にせよ絵画にせよ音楽にせよ、作者の私生活とその作品は別物だと考えている。最後は狂死したからといって、ゴッホの絵に嫌悪感を抱くようなことはしないということだ。
 なので坂東さんの小説に接するスタンスも、ゴタゴタ以後もまったく変わらない。むしろあの件があってから、作品に凄味が増したとさえ思っている。

 そんな坂東さんが遺した最後の長編小説のラスト、ありとあらゆるこの世のしがらみから解放されて流れに身を任せていく主人公の後ろ姿に、正直じんとなった。「みんな、するりと抜けだして、どこかに行きたいのだ」……これが坂東眞砂子のラスト・メッセージだ。
 「瓜子姫の艶文」は紛れも無く、今年読んだ小説のベスト・ワンである。
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