セコさと意地だけで挑むマラソン大会や、しみじみとした日常を綴ります。



   
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まんた1968

Author:まんた1968
数年前からランニングを続けている奈良県在住のオッサンです。
年に二、三回ですが、ウルトラマラソンにも挑戦しています。
タイムは凡庸なものですが、完走を目標に意地で走りつづけることを得意としています(笑)。

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第13回伊豆大島ウルトラランニング③

   
 元町港を通過して島の西海岸を南下する。進行方向右側の木々がうまい具合に海からの風を遮ってくれるので、寒いことに違いはなくとも、身体に受けるダメージが幾分和らいだような気がする。と同時に、気分的にもホッとして、「何とかなるんでないかい?」と活気も生まれてくる。

 海岸線に沿ってずっと走り、15km地点を通過。
 20kmを過ぎた辺りで、左手に見事な地層が現れる。
 火山島ならではの景観と言おうか、この地層大切断面は「バウムクーヘン」と呼ばれ、大島の観光スポットの一つとなっているようだ。実際土産物店には、この地層にちなんだお菓子のバウムクーヘンが並んでいたりする。
 とにかく見事な眺めだが、生憎写真はこれ一枚しか撮っていない。というのも100kmコースでは2周目に、またここを、今度は逆方向から通過することになっているので、「写真はその時でええわい」と考えていたのだ。

 要するにこの時点では、気持ちが安定していたこともあり、2周目が有ると思っていたわけだ。リタイア後に振り返ってみると、何ともおめでたい話である(笑)

 そんな一時的な安定状態は25km地点を通過し、島の南端にある波浮港(はぶみなと)に到達する頃まで続いたように記憶している。ちなみにここが第一関門。

 しかしその後、島の東海岸へ回り込んだ頃から、次第にコースは上り調子になり、雨はまた激しく、おまけに寒さもぶり返し始めた。
 嫌な予感がする……とその時、前方に山が立ちふさがった。長らく海沿いを走ってきただけに、唐突な出現に思えた。
 おおっ!ってな具合である。「ひょっとしてあれを越えていくんかいな?」と一瞬ぎょっとした。初出場ゆえの驚きである。
 脳裏にコースの高低図を思い描く。そういえば31km地点くらいから、一気に折れ線が跳ね上がっていたように記憶している。どうやらその入口に差し掛かったらしい。100kmコース最大の難所だ。

 少し行くと海から突き出た奇妙な岩が見えた。
 この奇岩は「筆島」と呼ばれ、「神の宿る場所」として崇められてきたという。数10万年以上前の古い火山の中心部にあった硬い岩が、周囲を荒波に浸食されたゆえ、今のような形になったらしい。
 写真撮影の後、レースの無事を祈って合掌。これ以上、どうか天候が荒れませんように……。

 が、そんな祈りも空しく、海岸線に別れを告げた後、コースは登坂一辺倒となり、2kmほどの区間で標高は一気に350mほど跳ね上がる。同時におのずと気温は低下し、強烈な冷え込みが襲い来る。
 風雨もまた増してきた。寒さを苦手とする身に、これはた…たまらん。明け方に北の沿岸部で味わった苦痛を凌駕する次元の寒さである。あれ以上は無いだろうと思っていたのだが、まさか……(泣)

 寒気に身震いしながら登坂を続け、いつしか35km地点を通過。この辺りは三原山山麓の東側に位置し、火山灰で覆われた道のようなものが山の方角へ向けて口を開けている。
 不確かな記憶だけど、「裏砂漠入口」と看板が掲げられていたような気がする。この黒い道を辿っていくと、そこには漆黒の不毛の大地が拡がっているのだろうか。

 それはさておき、上の画像でも明らかなように、標高の高いこの地点まで来ると、辺り一面に靄のような霧のようなガスが漂い始め、視界が著しく悪くなった。同時にこのガスは更に気温を低下させた。
 弱り目に祟り目とはまさにこれ。裏砂漠入口から先は一旦下り坂になり、41km地点まで来ると、また一気に標高500数十mまで登坂し、100kmコースの最も高い場所まで到達するのだが、もうこれ以上の寒さには耐えられそうにないと思い始めた。
 通常なら延々と登坂を続けていければ、嫌が上にも体温が上昇するものだけど、今回はそれが無い。むしろ登れば登るほど身体は冷えていくばかりだ。

 真っ白いガスに覆われた道を、風雨に打たれながら進んでいく。三原山山麓の北側を西へ向けて移動しているはずだが、方向感覚は皆無で、もうひたすら寒いだけ。カメラを取り出す気力も何もかも失せ、エイドで立ち止まると身体がガタガタ小刻みに震え続けた。
 危険な兆候だ……ぼんやりそんなことを思った。幸い食欲はまだ残っている。これ以上酷いことにならない内に、決断しなければなるまい。問題は、その場所をどこにするか、だ。
 レース続行を断念するにしても、頂点だけは極めたい。

 そこから先のことはよく憶えていない。視界不良の中、ただ延々と登坂した記憶が微かに残っているだけだ。
 そして気が付けば、51.1km地点にある第2関門・三原山歌の茶屋に到着していたのだった。ここがコース中の最も高い場所である。
 関門閉鎖の午後1時までには、まだ1時間以上の余裕があった。

 関門の手前で千葉県のアベベさんを発見していた。アベベさんは半袖で防寒ビニールも纏わず、私以上に無防備であったが、寒さに強い体質なのか、まだ余裕はあるようだった。
 「残念やけど、今回はここまでにしときます」茶屋の室内でストーブにあたり、明日葉の蕎麦をすすりながら、アベベさんに告げた。
 「えっ、マジっすか? 時間もまだあるし、行けますよ」アベベさん、相変わらず豪快な食いっぷり(笑)
 確かに時間も脚力もまだ残っている……けど、寒さにやられて、どこからも戦意が湧いてこんのよ、もう(泣)

 「頑張って」アベベさんを茶屋から送り出した後、私は近くにいたスタッフさんにリタイアする旨を申告したのだった。
 スタッフさんの手で胸のゼッケンからチップが回収され、収容車が到着するまでの間、茶屋奥のストーブの側で待つように案内された。

 上半身を毛布ですっぽりくるんでもらい、熱いお茶を頂戴する。ストーブの効果はてきめんで、次第に身体の震えが収まってきた。低体温の症状から脱したようだ。
 隣には同じく低体温でリタイアした男性がいて、私以上に症状がひどく、紫色の唇をしてブルブルと震えていた。見かねたスタッフさんがジャンパーを脱いで、膝に掛けてあげていた。

 こうして私の伊豆大島ウルトラランニング初挑戦は終わった。
 58kmの部で出場していたのならば、茶屋からゴールの総合開発センターまで、残りおよそ7km、ひたすら下るばかりなので無理してでも続行していたかもしれないが、100kmの部の場合は、そこから更に、今度は時計回りに島を一周しないとならないのだ。
 この後気温が上昇する気配も、風雨が収まる気配も無かったので、半分を過ぎた時点でリタイアに踏み切った。その決断が正しかったのかどうかは、神のみぞ知る、だ。

 宿に戻り、すぐさま熱いシャワーを浴び、その後1階の共用スペースで予約しておいた「島弁当」を食べた(晩飯にする予定が昼飯になってしまったのである・笑)。
 同宿の人たちも続々とリタイアで帰ってきており、伊豆大島ウルトラランニングの常連さんで、スパルタスロンや桜道ネイチャーランなどの完走歴を持っておられる男性までが、今回ばかりは早々にリタイアされていた。それだけ例年とは異ったということだろう。とにかく寒すぎた。

 昼食後、自分のカプセルへ引き上げ、一眠りする前にデジカメの写真を確認してみた。すると裏砂漠のデータの後に、撮影した記憶の無い一枚があった。
 椿の写真だった。
 大会当日は「伊豆大島椿まつり」の最終日で、見頃を過ぎた椿の花が暴風雨せいもあって、コースのあちこちに散っていた。
 低体温の症状が出始め、震える手で撮影したであろうこの一枚には、その時の自分の心境が如実に現れているようで恐ろしい。
 そう……これを撮った時、私はこの椿の花のように迷っていたのだ。冷たい風雨にもめげず、レースという木に最後までしがみつくべきか?、はたまたここを散り時と定め、潔く落ちるべきか?……その両極で激しく揺れ動いていたのである。

 未完走という結果に終わった今回の伊豆大島ウルトラランニング100kmの部、負け惜しみに「椿の花だけが私の葛藤を静観していた」と格好をつけて(笑)、レースレポートの店仕舞いとさせていただきます。

 【この度の伊豆大島旅日記自体は、もう少し続きます(_ _)】
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